英語を何年も勉強してきたのに、いざ話す場面になると言葉が出てこない。単語も文法も知っているはずなのに、口からは何も出てきません。
私自身、22歳まで英語がまったく話せませんでした。そこから英語学習に費やしたお金は約700万円です。
英会話スクールに通い、オンライン英会話を毎日受け、単語帳を暗記する。海外ドラマを字幕で見て、使えそうなフレーズをノートに書き写す。それでも、ネイティブを前にすると頭が真っ白になりました。
遠回りをした原因は、教材の質ではありませんでした。何を、どの順番でやるのかを知らなかったことです。このページでは、その順番のうち話す力を鍛える部分だけを、必要な記事へのリンクとともにまとめています。
話す力を決めるのは、会話した時間ではありません
話す力は、ネイティブと会話をした時間の長さでは決まりません。決めるのは、言いたい日本語を英語に変換する速度です。
会話の場は、すでに持っている力を出すところです。手持ちの表現は、そこでは増えません。増えるのは、一人で練習しているあいだだけです。
会話とは、一人で行う同時通訳です。
同時通訳者は、どんな日本語が来ても瞬時に英語に変えられなければ仕事になりません。会話も同じで、頭に浮かんだ日本語をその場で英語にして口に出しています。違うのは、その日本語が相手のものか自分のものかだけです。
この変換速度を一人で鍛える訓練が、TELM(Tai's English Learning Method)の瞬間独り同時通訳(ISI)です。音読で口を英語に慣らし、暗記で型を蓄え、その型を使って自分で英文を作る。この三つを一つのサイクルとして毎日回します。話し相手は必要ありません。
もう一つ、変換を助けるのが万能表現(VPE)です。一つの英語表現で複数の日本語をカバーできる言い回しを持っておくと、知らない単語に出会っても言い換えでしのげます。
話す訓練は、7ステップのどこに入るのか
TELMの7ステップは、私が同時通訳の現場に立つまでに実際にたどった順番です。話す力を鍛えるのは、このうち前半の三つです。ステップ1で土台をつくり、ステップ2で英文を口に入れ、ステップ3でそれを自分の言葉として使えるようにします。
その手前に、ステップ0があります。音のルールを知る練習で、これだけは初日から毎日、他のステップと並行して進めます。英語の音は4技能のなかでいちばん伸びるのが遅く、しかも文法の知識がなくても始められるからです。
- 0 音の土台をつくる(発音のルールと聞き分け)
- 1 文法を知識として入れる このページ
- 2 英文を音読して暗記する このページ
- 3 覚えた英文を自分の場面で使う このページ
- 4 精読と速読を練習する
- 5 精読と速読をリスニングに応用する
- 6 きちんとした文章を書けるようにする
- 7 文法・語法・コロケーションを意識して生の英語に触れる
ステップ4以降は読む・聞く・書く・実践の話なので、このページでは扱いません。全体の地図は英語をマスターする完全ガイドにあります。
ステップ1:土台をつくる(文法と単語)
「ネイティブは文法なんて考えていない」
これは逆です。文法は、限られた語彙でも言いたいことを正確に組み立てるための道具です。道具がなければ、暗記したフレーズの範囲でしか話せません。
会話で使う文法の範囲は、学校で習うものとほとんど同じです。違うのは求められる速度だけです。試験には数十秒考える余裕がありますが、会話では考えている数秒のあいだに話題が次へ移ります。ゴールは問題が解けることではなく、話しながら無意識に正しい形が選べることです。
文法用語そのものは、学校で習うものが約300あります。そのうち会話で実際に使うのは57個です。TELMではこの57個を、文を分析するための用語ではなく話すための道具として定義し直します。
単語も同じで、見れば分かる状態と、言いたいときに出てくる状態は別物です。日常会話に必要な語彙は思われているより少なく、まず3,000語を出てくる状態にするのが現実的な目標になります。仕上がったかどうかは、反応の速さで判定します。
- TELMステップ1:文法ルールを知識としてインプット
- 英会話に文法は本当に必要?同時通訳者が教える「話すための文法」の真実
- 英語をマスターするために文法知識は必須である
- 英会話をマスターするには受験英語の勉強が必要である
- 品詞別の文法(名詞・形容詞・副詞・前置詞・冠詞)
- 日常英会話の基本英単語(1〜3000)
- 英語の語法を学ぶ重要性
- 英語コロケーションの重要性
ステップ2:英文を音読して暗記する
ここから話す訓練の本体に入ります。ステップ2とステップ3は別々の勉強ではなく、一つのサイクルとして毎日回します。
音読で口を英語に慣らす
ステップ1で学んだ文法の例文を、声に出して読みます。テニスの素振りと同じ基礎練習で、口を英語の並びに慣らすのが目的です。すらすら言えない文があれば、言えるようになるまで繰り返します。
暗記で使える型を蓄える
インプットがなければアウトプットは出てきません。英文を見ずに言える状態まで持っていくことで、使える型が増えていきます。まずは自分のことと身の回りのことを全て英語で言えるようにするのが、いちばん実用的な出発点です。
ステップ3:覚えた英文を自分の場面で使う
ここでつまずく方がいちばん多く、そしてここが分かれ目です。音読と暗記で止まってしまうと、覚えた文は覚えた文のままで終わります。覚えた文を自分の状況に置き換えて、口に出して言い直す。この作業を通してはじめて、実際の会話で出てくるようになります。
音読を100回するより、応用練習を10回するほうが効果があります。
このとき、紙に書いてはいけません。実際の会話には紙もなければ、文の構造を考えている時間もないからです。スポーツや楽器と同じで、正しい形が口から自動的に出るまで声に出して繰り返します。
- 英語独り同時通訳の具体的な勉強法
- 独り同時通訳:練習用の日本語文と英訳例
- 一人で英語を話す練習をしているときに英文は書いてはいけない
- 同時通訳のプロセスを応用し、英語を文頭から作れるようにする
- 難しい日本語は簡単な日本語に変換してから英語に訳していく
- 英語を話す際は、母国語を最大限に活用する
- 日本語の文章を元に、スラスラと正確な英語に訳していく方法
- 英語で長い文章を話すときのコツ
- 英作文はするな、英借文をしなさい
- 英訳本を用いたスピーキング練習法
- 日英通訳トレーニングを英会話に活かす
実践の場との付き合い方
基礎がないまま会話の場に出ると、めちゃくちゃな英語を話す癖がつきます。言いたい日本語が英訳できず、適当な英語を口にして、相手が察してくれて次の話題へ移る。この流れでは英語力は伸びません。復習もしていなければ、正しい文法と語法の確認もできていないからです。
正しい使い方は、前もって話す内容を英語で考え、すらすら出るまで音読しておくことです。言えなかった表現はその場で拾い、正しい言い方を調べて、次回使えるように音読しておきます。
話すことについて、よくある誤解
話す機会は、すでに持っている力を出す場です。手持ちの表現は、練習でしか増えません。
練習相手としては優秀ですが、相手が変わっても、出てくるのは自分がすでに持っている表現です。
会話で使うのは、まさにその文法です。違うのは求められる速度だけです。
日本語を経由してはいけないという制約は、初期の学習者には重すぎます。まずは変換の速度を上げるほうが現実的です。
正直にお伝えしておきます
英語を楽に、簡単に、短期間で身につけることはできません。毎日3時間勉強しても、日常会話で言いたいことを話せるようになるまでには最低1年かかります。すらすら話すには膨大な量の例文の暗記が必要で、100フレーズでは全く足りません。
旅行で困らない程度でよければ、市販の旅行表現集で足ります。簡単な会話を楽しみたいだけなら、日常会話表現集の丸暗記で事足ります。ここに書いた方法が必要になるのは、言いたいことを自由自在に話し、ネイティブと対等にやり取りしたい場合だけです。
その代わり、この順番で積み上げた力はフレーズの丸暗記とは違って応用が利きます。私は22歳から始めて同時通訳の現場に立ちました。遠回りさえしなければ、届く場所です。