英語をマスターする完全ガイド
英語の学習法に関する情報は、いまや無料でいくらでも手に入ります。それでも多くの方が途中で止まってしまうのは、情報が足りないからではありません。何を、どの順番でやればいいのかが分からないからです。
私自身、22歳まで英語がまったく話せませんでした。英会話スクールに通い、教材を買い集め、最終的に700万円ほどを英語学習に使っています。遠回りをした原因は、教材が悪かったこともありますが、正しい英語学習の順番を知らないまま目についたものから手をつけていたことでした。
このページは、その英語学習の正しい順番を一枚にまとめた地図です。上から順に読んでいただいても、いま自分がつまずいている段階だけを選んでいただいても構いません。
なぜ「何をやるか」より「どの順番でやるか」なのか
英語習得がいつまでたってもできない理由として、以下の2つがあります。
一つは、土台がないまま練習を始めてしまうことです。文法と単語が頭に入っていない状態で英会話のレッスンを受けても、口から出てくるのは、すでに知っている数十個のフレーズだけです。レッスンの時間は知らないことをインプット時間というよりも、すでに自分が知っていることを確認する時間になり、月謝を払い続けても手持ちの表現は増えません。
もう一つの理由は、知識だけを増やし続けるということです。参考書を何冊も終わらせ、単語帳を何周もしても、いざ話す場面になると一言も出てこない。
これは知識が足りないのではなく、知識を使う訓練をしていないからです。「知っている」と「使える」はまったく別のスキルで、後者は後者で別に鍛える必要があります。
正しい英語学習の順番とは、上記二つを避けるための道筋のことです。土台をつくり、その土台を4技能それぞれで「使える」状態に変え、最後に実践の場で仕上げる。この順番を守るかどうかで、同じ教材を使っても結果が変わります。
学習の全体像:TELM7ステップ
私が英語学習をしていく中で、同時通訳の現場に立つまでに実際にたどった順番を、7つのステップに整理したものがTELM(Tai’s English Learning Method)の7ステップです。そしてこの7つの手前に、初日から並行して進めるステップ0があります。
ステップ0:音の土台をつくる(発音のルールと聞き分け)
- 文法を知識として入れる
- 英文を音読して暗記する
- 覚えた英文を自分の場面で使う
- 精読と速読を練習する
- 精読と速読をリスニングに応用する
- きちんとした文章を書けるようにする
- 文法・語法・コロケーションを意識して生の英語に触れる
ステップ0を別枠にしているのには理由があります。英語の音を聞き分ける力は4技能のなかでいちばん伸びるのが遅く、そのくせ文法の知識がなくても始められます。あとの段階に回すと、それだけで数か月を捨てることになります。ですから初日から、他のステップと並行して短時間ずつ進めてください。
残りの7つは、前半が土台づくり、中盤が4技能の訓練、後半が実践という三層になっています。以下では、その三層ごとに「何を、なぜ、どうやるのか」を説明していきます。
第1段階:土台をつくる(ステップ1)
土台とは、文法と単語のことです。ただし、ここでいう文法と単語は、試験のためのそれとは求められる状態が違います。
文法
会話で使う文法は、範囲そのものは学校で習うものとほとんど変わりません。違うのは求められる速度です。試験であれば、選択肢を見比べて数十秒考える余裕があります。会話では、考えている数秒のあいだに話題が次へ移ってしまいます。
つまり文法学習のゴールは「問題が解けること」ではなく、話しながら無意識に正しい形が選べることです。そのためには、まず一通りのルールを知識として入れ、そのうえで自分で英文を作る練習を通して、知識を反射に変えていきます。ルールの説明を読んで納得した段階は、まだ半分です。
学校文法は会話では役に立たない、という主張をときどき目にしますが、私はまったく逆だと考えています。文法は、限られた語彙でも言いたいことを正確に組み立てるための道具です。道具がなければ、暗記したフレーズの範囲でしか話せません。
単語
単語も同じで、「見れば意味が分かる」状態と「言いたいときに出てくる」状態はまったく別です。日常会話で必要な語彙は、多くの方が思っているより少なく、まずは3000語程度を「出てくる」状態にするのが現実的な目標になります。
そのための練習が、日本語を見た瞬間に英語が口から出るまで繰り返す訓練です。意味を思い出せるかどうかではなく、反応の速さで仕上がりを判断します。
加えて、一つの単語で多くの場面をカバーできる万能表現(VPE)を覚えておくと、知らない単語に出会ったときに言い換えでしのげるようになります。
第2段階:4技能を伸ばす(ステップ2〜6)
土台ができたら、それを技能ごとに「使える」状態へ変えていきます。4技能は別々の能力に見えますが、土台は共通で、伸ばす順番にも意味があります。
話す(ステップ2・3)
話す力は、ネイティブと会話をした時間の長さでは決まりません。決めるのは、言いたい日本語を英語に変換する速度です。
そのために私が使ってきたのが、日本語の文章を見て、それを英語に訳しながら声に出す瞬間独り同時通訳(ISI)という訓練です。
この訓練は話し相手を必要とせず、一人で毎日できます。音読で英文を口に慣らし、暗記で型を蓄え、その型を使って自力で英文を作る。
この三つを一つのサイクルとして回します。前の二つ、つまり音読と暗記がステップ2で、最後の自力で英文を作るところがステップ3です。ここを飛ばして音読と暗記で止まると、覚えた文が覚えた文のまま終わります。
この技能だけで解説が一本の記事になる分量があるため、詳細は以下の専用ガイドにまとめました。
読む(ステップ4)
読む練習には、精読と速読という性質の違う二つがあり、必ず精読が先です。
精読は、一文一文の構造を正確に把握する練習です。どれが主語で、どこからどこまでが修飾か、この前置詞は何にかかっているのか。時間をかけて構造を見抜く作業を通して、文法知識が「読める形」に変わります。
速読はその後です。構造が見抜けるようになってから、前から順に意味を取る練習に進みます。順番が逆になると、分からない部分を雰囲気で飛ばす癖がつき、速く読めているつもりで内容を取り違えることになります。速読は精読の上にしか乗りません。
聞く(ステップ5)
リスニングは、独立した能力ではありません。読んで分からない英文は、聞いても分かりません。文字にすれば理解できる英文が、音になると追いつかない。この状態こそがリスニングの課題で、逆に言えば、読む力が先にないと練習が成立しません。
ですからリスニング力を鍛えるためには、精読と速読で身につけた処理方法やスピードを、音を聞いて応用できるようにしないといけません。聞き流しで自然に聞き取れるようにはならないのは、処理のやり方そのものを鍛えていないからです。
書く(ステップ6)
書く力は、話す力と同じ変換作業を、時間をかけて行うものです。違いは、辞書を引き、書き直せること。つまり書く練習は、話す訓練の精度を確かめる場としても使えます。
このとき大切なのは、ゼロから英文を創作しないことです。すでに存在する正しい英文を借りて、自分の言いたいことに合わせて部品を入れ替える。この考え方を身につけると、不自然な英文が一気に減ります。
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第3段階:実践に出る(ステップ7)
教材の英語と、実際に使われている英語は違います。教材の音声は聞き取りやすく整えられており、文章も学習者向けに調整されています。最後の段階では、その保護を外します。
具体的には、映画・ニュース・仕事のやり取りといった生の英語に触れ、そこで出会った表現のうち「自分も使いたい」と思ったものを持ち帰って、自分の引き出しに入れていきます。これがステップ7です。
ここまで来ると、学習は「新しい教材を探すこと」ではなく「日々出会う英語から拾い続けること」に変わります。終わりのある勉強から、続けられる習慣へ移る段階だと考えてください。
よくある誤解
最後に、遠回りの原因になりやすい思い込みを挙げておきます。
- たくさん聞いていれば、そのうち聞き取れるようになる — 読んで分からない英文は、何度聞いても分かりません。
- ネイティブと話す量を増やせば話せるようになる — 話す機会は、すでに持っている力を出す場です。手持ちの表現は、練習でしか増えません。
- 英語は英語で考えなければならない — 日本語を経由してはいけない、という制約は初期の学習者には重すぎます。まずは変換の速度を上げるほうが現実的です。
- 学校で習った文法は会話では使わない — 会話で使うのは、まさにその文法です。違うのは求められる速度だけです。
- AIと会話練習をすれば話せるようになる — 練習相手としては優秀ですが、相手が変わっても、出てくるのは自分がすでに持っている表現です。
次の一歩
上から順に進めるのが、いちばん確実です。ただ、独学で最後まで走り切るのは簡単ではありません。この学習法そのものについては、別のページにまとめています。
さらに読む:学習の心構えと準備
学習法より前に決めておくと、途中で止まりにくくなることをまとめた記事です。
英語学習をする上での心構え
- 英語を楽して簡単に身につけることができない本当の理由
- 英語学習者の8割が挫折する理由
- 全て自分の責任であると考えれば英語力は伸びる
- 英語の勉強は達成感を味わうことで楽しくなる
- 素直に講師の言うことを実践できる人が英語を身につけやすい理由
- 英語を学ぶ目的を明確にする
- 英語を学ぶ目的が決まったら具体的な目標設定をする
- 最短で効果が出る英語の勉強法とは?
- ネイティブとのオンライン英会話レッスンは効果的か
- 英語を効果的に勉強するための順序を知ることの重要性
- 日常英会話、ビジネス英語で受験英語のような難しい文法は使うか
- ノンネイティブとの会話で自分の英語が通じない場合の心構え
- 真の実力を身につけて英語のトリプルクラウンを目指せ
- 英語の本質を学べばあらゆる分野で応用可能である
英語習得に必要な要素、準備するべき物
- 英語学習に必要な本は3冊です
- 大人の日本人が、ネイティブと同等の英語力を習得できるか?
- 4技能を効果的に高めるための土台となる文法力と単語力
- 単語力は語法、コロケーション、決まり文句、専門用語で決まる
英語を英語で考える
英和・和英辞書について
自分の作った英文に自信がないとき