すでにご存知の方が大多数だとは思いますが、2016年5月29日(日)実施の第210回試験から、TOEIC公開テストの出題形式が一部変更されます(以下「新形式TOEIC」と呼びます)。ここでは、新形式TOEIC試験のリーディングセクションの解説をします。
リーディングセクションの特筆すべき2つの変更点
リーディングセクションでの変更点は2点です。1つ目は、パート6及びパート7の設問数の増加です。これまでパート6の設問数は1題あたり3問づつ(合計4題)でしたが、新形式TOEICでは1題あたり4問ずつに設定されています(合計で4問増加)。パート7は、全体の設問数が6問増加して、合計54問になります。
パート6及びパート7の増加分(10問)は、パート5の短文穴埋め問題から削減され、パート5は40問から30問になります。リスニングセクションと同様、全体の設問数と試験時間に変化はない(75分間で100問)ものの、パート6及びパート7の設問数が増加したことにより、実質的な負担は非常に増えると言えるでしょう。
このため、戦略的な時間配分を計画して問題に取り組む必要があります。大まかな目安ですが、パート5は1問あたり遅くとも30秒以内で処理(30問で15分)し、残りの60分でパート6及びパート7を解答するのが理想です。パート5についてはこれまで通り文法知識を問う設問であり、数秒で処理できる問題もありますので、目安の15分を更に短縮することも十分可能です。
2つ目は、パート6及びパート7に「文書の全体的な構成を理解しているか問う設問」が加わります。具体的には、文書内に新たな一文を挿入する問題が新設されます。
リーディングセクションの変更点のうち、最も厄介なものがここです。
新たな一文を挿入するわけですから、前後の文脈はもちろん、全体的な構成を把握しなければ解答できません。言い換えれば、対象となっている文章を全て読むことが求めらているということです。
これまでのリーディングセクションでは、必ずしも文章の全体を読む必要はありませんでした。文章の一部分だけを読めば解答できる設問もあったのですが、新形式TOEICではその手法も方向転換を迫られそうです。
このように、新形式TOEICのリーディングセクションについては、設問数の実質的増加に伴う負担が増えることにより、高得点者とそうでない受験者の差がこれまでよりも明確になりそうです。問題自体の難易度が上がったわけではありませんが、全体的な読解量の負担が増えるわけですから、多くの受験者は「難しくなった」と感じるでしょう。
豊かな語彙力と文法知識をつけて、構文を頭に叩き込む
前述したとおり、新形式TOEICのリーディングセクションでは、いかに効率的に(速く)問題を処理できるかというのがキーポイントとなります。「文書の全体的な構成を理解しているか問う設問」が加わることにより、文章の全体を読まなければならない設問が出てきますので、受験者にはこれまで以上に読解力が求められます。
読解力を養うために大切なのは、まず基礎力です。基礎力というのは、語彙力と文法知識です。幸いTOEICで出題されてきた語彙と文法問題は、基礎的なものが大多数を占めています。
文法と単語についての詳細は、「英語をマスターするにあたり、文法知識は必須である」、「英会話をマスターするには受験英語の勉強が必要である」、そして「クイックレスポンスで単語力をつける」をご覧ください。
基礎力がついてきたら、読解問題に取り組みます。読解力は、基礎力を前提としてどれだけ英文を読み込んだかで決まるので、とにかく量をこなしてください(たくさんの問題を解いてください)。読解力が上がらないと嘆いている方のほとんどは、基礎力の欠如に加え、読み込む量が少なすぎることが原因です。
読み込む量が大切なのは、読んだ英文が多ければ多いほど、それだけ多くの英語構文(文章の構成)が頭に残るからです。英語という言語は日本語と違い、その文章の意味を決定づけるのは語順です。
日本語には助詞がありますから語順を入れ替えても意味が通じますが、英語は語順が変われば意味も変わります。英語の読解力というのは、言い換えると、構文を読み取る力ということになります。
読解力の向上は、短期間で成果が現れるものではありません。基礎力を前提として、読解力を向上させるためには、長い時間と労力が必要です。ですから、毎日読み込んでください。リーディングに関しての具体的な学習法は、「リーディングにおける単語と精読の具体的な学習法」をご覧ください。
試験日が近づいてきたら、一応予習として問題集を解いてみると良いでしょう。問題集は、TOEIC用のリーディング問題集で大丈夫ですが、できればパート6及びパート7に特化したもので、問題数が豊富なものを選んでください。
まとめ
リーディングセクションで大切なのは、まず基礎力(語彙力と文法知識)です。基礎力の身につけ方は、私のサイトに書かれてある記事を参考にしてください。
そして、基礎力が定着してから読解問題に取り組みます。読解力は、基礎力を前提として、どれだけ英文を読み込んだか、言い換えると、どれだけ英語構文が蓄積されているかで決まります。途中で投げ出さずに、毎日継続してください。