クイックレスポンスは通訳トレーニングの1つです。日本語もしくは英語をみて、瞬時にその対訳を口頭で発するという練習法です。
通訳者は瞬発力が勝負です。特に同時通訳に関しては、スピーカーの言ったことに対してできるだけ早く翻訳していかなければなりません。
そのためにも、「この日本語にはこの英語を使う」と前もって決めておくことが大切です。特定の日本語が出てきたとき、瞬間的にそれに対する英語を口から出すことができれば流暢性が上がります。
英会話学習にもクイックレスポンスは効果的
このトレーニングは、日常英会話の学習でも大いに役立ちます。私たち日本人は、何かを話すときに英語よりも日本語で考える方が楽です。あらかじめ「自分の言いたい日本語」に対する英訳をスラスラと言えるようにしておけば、その日本語を発想したとき、すぐに英語を口から発することができます。
現在は「英語を英語で考えること」があらゆる場面でいわれます。そのため、このやり方だと、「日本語を考えながら英語に訳すことであるため、英語を英語で考えることにはならないのでは?」と疑問に持つ人もいるでしょう。確かに、理想は「言いたいことを何でも英語で考えられるようになる」ことです。
しかし、そのレベルに達するには相当な英語力の持ち主でなければ無理です。初級者や中級者が英語を英語で考えるには相当の時間がかかります。十分な英語の表現や文章を暗記していないのに、英語で考えることは不可能なのです。
そのためにも、「英語を英語で考える」ことができるようになる前の段階として、クイックレスポンストレーニングを使うのです。英語を英語で考える代わりに日本語で考えていても、それほど問題ありません。日本語を英語に転換するスピードが速くなれば、英語で考えるのと同じくらい流暢に話せるからです。
特に自分の意見などといった難しい抽象概念を表現する際は、日本語を英語に変換する作業の前に、「何を話すか」を考えなければいけません。その「何を話すか」の部分については、母国語で考えた方がはるかに効率的です。
実際、私は「英語で考える」割合は5~6割ほどです。あとは全て表現したい内容を日本語で考えています。そのためにも、クイックレスポンスによって適切な単語をいつでも引き出せるようにしておきました。
また、受験英語で習う各文法を使って沢山の例文暗記を行ってきたので、今では不自由なく英語を操ることができます。
先に述べたように、日本人が英語を話す際は日本語で考えた方が効率は良いです。日本語に対する英単語を前もって覚えておけば、あとは「文法力を駆使していかに早く英文を作れるか」が勝負です。
クイックレスポンスは、リーディングやリスニング力アップにも効果的
スピーキングやライティングの力をあげるためのクイックレスポンスは、「日本語を見て英語を言う練習」が効果的です。一方、「英語を見て日本語を言う」練習は、リーディングやリスニング力の向上につながります。
リーディングやリスニングが苦手という人はとても多いです。その理由の1つに、語彙力不足というものがあります。英字新聞や雑誌などを辞書なしでスラスラ読むためには、どれだけ少なくても1万語を暗記しておく必要があります(英検1級は最低でも1万2000語暗記するのが理想です)。
「実際の英語では難しい単語はそれほど使わないので、1万語も覚えなくてもよい」という人もいます。しかし、それは大きな間違いです。
ネイティブが知っている平均語彙数について、有名な雑誌「The economist」で紹介されています。それによると、「大人のネイティブスピーカーの語彙力は2万~3万5千、8歳の子供は1万、そして4歳の子供は5千の単語を知っている」と言われています。
8歳の子供ですでに、英字新聞や英検1級レベルの語彙力です。当サイトでは、「日常英会話をするために最低でも3000語を覚えるように」と言っています。しかし上記の語彙数を考えると、ネイティブと対等に話すためには3000語では全く足りません。
「リーディングやリスニングでいまいち上達が感じられない」と思うのであれば、語彙力を1万語まで伸ばしてみてください。そうすれば、英文がかなり読め、聞き取れるようになっているはずです。そのためにも、クイックレスポンスで効率よく単語力を伸ばしていってください。