「TOEICや英検1級などのリスニングセクションで高得点を取れるが、実際の英語が全く聞き取れない」という相談をよく受けます。
考えられる理由の1つとして、生の英語特有のなまりに慣れていないことがあります。また、実際の話されるスピードが試験のスピードよりも圧倒的に速いことも原因です。
市販の教材では説明されていない発音の崩れのルール
リスニングを学習する際、単語同士が繋がって1つの単語として聞こえる「リエゾン(連結)」や、単語の最後の音が発音されなくなる「脱落」など音のルールを学んだ人は多いです。例えば、「an apple」は連結が起こり、「アナァポー」と聞こえます。
しかし生の英語では、市販のリスニング本や英語学習サイトではあまり説明されていないさらなる連結や脱落が起こっています。
たとえば「Did she」の場合、多くの本では「ディッシーと聞こえる」と説明しています。しかし、実際の会話ではさらに省略されます。「ディッシー」ではなく、「ッチ」と聞こえるのです。「Did she take that?」の場合は、試験やフォーマルな英語は「ディッシテイッザ?」と聞こえます。日常英会話の英語では、「ッチテイザ?」と聞こえます。
他にも、do you~?は「ディユ」ではなく、「ジュまたはジャ」と聞こえます。ただし、これらは全て親しい間柄の中での発音であり、ビジネスやフォーマルの場では、もう少しきれいな発音をします。
国や地域、一人ひとり独特の訛りが一番の壁
リスニングができない原因はこれだけではありません。国や地域、さらには人によって独特の訛りがあります。これによってさらに聞き取りにくくなります。一番分かりやすい例としては、国によって発音が違うことです。アメリカとイギリスには、多くの発音の違いがあります。
例えば「R」の発音をするときは、アメリカ英語では舌の先を上げてこもった音を出します。一方、イギリス英語では舌の先を上げません。また、「dog」の発音ではアメリカ英語では「ダーッグ」と聞こえます。イギリス英語では、「ドッ(グ)」と日本語のように聞こえます。
発音に関しては、カナダ英語やオーストラリア英語など、他にも多くの種類があります。これについては、それぞれ自分が学びたい国の発音を勉強するとよいでしょう。
地域による発音の違いもあります。例えば、私はイギリスのノッティンガムという地域に3年間滞在していました。始めの数ヶ月は、そこに住んでいるイギリス人の英語に慣れることにとても苦労したものです。
この地域出身の人たちは、多くの場合「T」の音を発音しません(Tにアクセントがついている場合を除きます)。そのため、「I’ve got a lot of letters.」という英文を話す場合、「アィ(ヴ)ゴッァロッォレッァー」という風に聞こえます。
上記の国や地域による発音の違いに比べ、人によって異なる発音を聞き取るのが一番大変です。はっきりと話してくれる人もいますが、あまり口を動かさずにこもった発音で話す人もいます。これによっても、聞き取りやすさが大きく変わります。
このような問題があるため、生の英語を聞き取れない人が圧倒的に多いです。TOEIC900点や英検1級を取得したとしても、ドラマや映画、そして日常会話の生の英語を聞き取れない人がいまだに多いのは、上記の2点が主な原因です。