ここでは、形式主語と形式目的語の違いについて解説をしていきます。この2つは会話で頻繁に使われますが、特に形式目的語を自在に使いこなせる人は少ないです。そのため、まずは比較的日本人の間でも使われやすい形式主語について確認をしていきます。
形式主語
形式主語とは以下のような英文を指します。
It is difficult to find the wallet he lost.
ここでは、itが形式主語です。本来itにあった主語はto find the wallet he lostですが、主語が長くなってしまって頭でっかちな文体になります。つまり以下のような形です。
主語
主語が長く、あとに続く動詞と補語が短い文章はバランスが悪いです。そのため、この主語にitを仮に配置し、本来の主語(真主語と言います)を一番うしろに置いて全体のバランスを整えます。
形式主語 真主語
今回は、to不定詞を名詞のように扱って(名詞的用法)主語においた文章でした。主語には名詞しかこれないため、名詞の役割を果たすものであれば何でも置くことができます。
例えば、動名詞や名詞節(that節)も形式主語と一緒に使うことができます。動名詞とは、動詞(eat, haveなど)の後ろにingをつけて名詞化させることを指します。一方、名詞節は、thatを使ってうしろに主語+動詞の文章を作り、その全体で名詞の役割を果たす節を言います(節とは、主語+述語から成り立つ文章のことです)。それでは、例文を見てみましょう。
It is no use asking him such a question.
それを今すぐ行うことが重要だ。(名詞節)
It is important that you (should) do it right now.
形式目的語
形式目的語とは、その名の通り目的語にitを置き、文章のうしろに真目的語を配置する文章を指します。形式主語と考え方は同じです。例文を見てください。
I found it difficult to persuade her.
この文章は主語+動詞+目的語+補語(SVOC)から成る第5文型です。主語がI、動詞がfound、itが目的語、そしてdifficultが補語となります。また、itが形式目的語でto persuade herが真目的語です。元の文章に直すと、以下のようになります。
このようにすると、第5文型の目的語がどこで補語がどこなのかが分かりにくく、また、文体のバランスも悪いです。そのため、ネイティブはあまりこのような文章を好みません。
英文の特徴は、右に行けばいくほど長いフレーズが置かれます。そのため、to persuade herがある目的語の位置にitを置き、to persuade herは文章の最後に置きます。つまり、下記のような文章構成になります。
こうすれば、長いフレーズ(to persuade her)は一番うしろに置かれ、バランスの良い文章となります。
他にも、that節の目的語が形式目的語のitに代わられる文章もあります。それが、下記のような英文です。
I take it for granted that she is kind to me.
itにはもともと、that she is kind to meが置かれていました。ただ、そうするとfor grantedがどこを修飾するのかが分かりにくくなり(takeを修飾しています)、英文を理解しにくいです。そのため、形式目的語のitを配置し、takeとfor grantedの距離を近くします。そして、that節はうしろに置きます。
以上が、形式主語と形式目的語の文章です。これらは決まり文句のように使っている人が大多数ですが、それでは自由自在に文法操作をできるようにはなりません。まずは理屈を理解し、そのあとに無意識で上記の文法を使えるように何度も練習をしてください。