ここでは、通訳における日本語の運用力を高めるためのトレーニング方法について解説していきます。
プロの間でよく言われている言葉があります。それは、「第2外国語が母国語を凌駕することはあり得ない」というものです。これは正にその通りで、母国語をしっかりと話せない人が英語であればスラスラ話せるということは絶対にありえません。そのため、より高度な英語力を身につけたいのであれば母国語も鍛える必要があります。
いまだに多くの人が誤解していることですが、「英語が流暢に話せるのであれば通訳もできる」というものがあります。しかし、英語が話せることと通訳ができることは全く別のスキルです。
通訳者になるためには、英語力はもちろんのこと国語力やノートテーキング技術、リテンション力、パラフレージング力、専門知識などが必要になってきます(これらは別のページで説明します)。
これらの中でも、国語力が特に重要です。英語が理解できたとしても、それを適切な日本語で表現することができなければ通訳は務まりません。
例えば友人などから通訳を頼まれると、「相手の言ってることは理解できるが、日本語でどう表現すればいいのか分からない」と言う人が結構います。これは通訳技術を習ってないことも原因の1つですが、母国語の運用力も影響しています。
反対に、日本語の運用力がある人は、通訳技術を習得していなくてもある程度は通訳できてしまうものです。
コロケーションを意識して日本語の運用力を鍛える
私も昔は国語が大の苦手でした。本もろくに読まず、友達ともあまり遊ばずにテレビゲームをするのが大好きでした。その影響で、国語力が非常に乏しかったのです。
通訳を目指したのが22歳のときでしたが、国語力のなさにいつも悩まされていました。英語を聞いて理解できますが、適切な日本語で表現することができなかったのです。そのため、私は日本語で書かれた本を大量に読むことにしました。特に、コロケーションを意識しながら読んでいました。
英語と同様に、日本語にもコロケーションが存在します。これを意識しながら読むと運用力が上がってきます。例えば、「車を運転する」とは言いますが「車をこぐ」とは言えません。「こぐ」は、「ボートをこぐ」というように使われます。このように、コロケーションを意識すれば正しい日本語力を身につけることができます。
私はまた、英文和訳集を作成して暗記していました。その表現集を見ながら、英語を見てそれに対する日本語が瞬間的に出てくるようになるまで何度も音読しました。このようにして正しい日本語を身につけていきました。
また、日本語のコロケーションを集めるためにお勧めなのが新聞です。新聞はコロケーションの宝庫であり、気になった表現をピックアップしてそれをノートに書き写していきます。それらを英訳すればスピーキング力の向上にもつながります。あとは上記と同じように、英語をみて日本語を言えるようにトレーニングしていきます。
ぜひこのトレーニングを実践してみてください。少しずつではありますが、日本語の運用力が向上していると実感できるでしょう。