精聴なき速聴は誤聴しているのと同じである

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リスニングの学習法は、「できるだけ多くの英語を聞きなさい。そうすれば自然に話せるようになる」とよく言われます。これはリーディングの学習法でも同じように言われ、「できるだけ多くの本を読めば、だんだんと読めるようになる」と言われます。

しかしこの学習法は、日本語が完全に身についた私たちにはほとんど効果がありません。例えば、「映画を字幕なしで見続けていたら、ある日英語が聞き取れるようになる」ということはありえません。分からない箇所は、英文のスクリプトで確認しない限り何度聞いても分からないからです。

では、「簡単な英文を聞く練習をし、徐々に英語レベルの難易度を上げていく」というやり方はどうでしょうか。このようなやり方では、「言いたいことは何となくわかるが細部まではわからない」というサバイバルイングリッシュといわれる聞き方になる可能性が高いです。

必ずどこかで文法的に理解できない文章に出会います。そのような文章は、文法の知識がない限り意味を完全に理解することはできません。基礎力を伴わないリスニングでは、ネイティブが伝えようとしている内容をきちんと理解することは不可能です。また、内容の濃い会話をすることもままならないでしょう。

目次

リスニング力を構成する4つの要素

リスニングには以下の公式が当てはまります。

リスニング力 = 文法力 X 単語力 X 精聴力 X 速聴力

まずは文法力と単語力を高めることが大切です。なぜなら、精聴力と速聴力の基礎が文法力と単語力だからです。文法知識が欠けていれば、文章を正確に理解することができません。また、分からない単語が多くても文章を理解することが困難になります。分からない単語は、いくら聞いても分かりません。

文法力と単語力がある程度のレベルに達したら、次に精聴力を上げる練習を行います。これはつまり、英文を冠詞から前置詞まで完璧に聞き取るための練習法です。

精聴力を高めるためには、音を聞き取る能力を上げる必要があります。リスニングにはまず、音を判別できる能力が必要不可欠です。英語には音の崩れがあり、これがリスニングを難しくさせているポイントの1つでもあります。

例えば、「an apple」は「アンアポー」のように1単語ずつ丁寧に発音することはありません。実際の会話では、「ァナァポゥ」のように繋がって発音されます。また、「get down」は「ゲットダウン」と発音せず、「ゲッダウン」のように「ト」の音が省略されます。このような音の崩れのルールを、しっかりと理解する必要があります。

ただ、英文を全て聞き取れただけで終わりにしてはいけません。例え全ての単語を聞き取れたとしても、文章の意味が分からないということがよくあります。これはつまり、文章の理解力が足りないからです。だからこそ文法力と単語力が必要なのです。この2つの能力が十分に備わっていれば、文章を理解できるはずです。

これは、リーディング力も関係しています。高度な文章を読んで理解できる力が高ければ高いほど、難しい英文を聞いて理解することが可能です。そのため、リスニングの勉強だけでなく、リーディングの勉強も並行して行うことが大事です。

頭から英文を理解する練習をして、速聴力を高める

精聴トレーニングをある程度行ったら、少しずつ速聴ができるようになっていきます。しかし、リスニングでは自分のペースで英文を聞き取ることができません。話す相手によって話されるスピードが変わりますので、私たちはなるべく早い英語でも聞き取れるようにあらかじめ訓練しておく必要があります。

リスニングでは、頭から英文を理解するための練習が必要です。リーディングのように帰り読みができないので、ネイティブと同じように聞こえてきた情報を文法的に正しく処理する能力が必要です。

関係代名詞の例を見てみましょう。「The girl who is knocking the door is my daughter.」は、「ドアをノックしている少女は私の娘だ」と訳されます。しかし、この訳し方では日本語と英語の語順が反対になってしまいます。リスニングでこの文章が流れた場合は、このような返り読み的な訳し方は不可能です。

そうではなく、ネイティブと同じように頭から理解するように努めてください。つまり、「その少女はドアをノックしている。私の娘だ」のように理解していきます。こうすれば英語の語順と同じになり、相手のスピードについていくことが可能です。

最初はこのような理解の仕方に慣れるのに時間がかかります。しかし、何度も頭から理解する練習をすることによって、徐々に無意識にできるようになっていきます。

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