最近の英語教育は、文法や英文読解学習が軽視されている傾向にあります。その代わりに、スピーキングやリスニングといったより実践的な勉強に力を入れているようです。
このような影響を受けて、英会話スクールや英会話カフェなどが人気になっています。また、スピーキングやリスニングに特化した学習本も多く販売されるようになりました。
こういったスクールや学習本を見てみると、「文法学習のような古い勉強法では、英語は身に付きません。ネイティブと楽しく会話すれば、自然と英語を聞き取れるようになり、また話せるようになります」と言っているものが多いです。
しかし、こういった学習法は成人である日本人には全く効果がありません。なぜなら、母国語ができあがってしまった大人の脳は、無意識に他言語を受け入れることができないからです。これはすでに言語学でも証明されており、今ではこの説は常識となっています。
確かに短い決まり文句であれば、何度も聞いているうちに自然と覚えることはできるでしょう。例えば、「How’s it going?」を100回聞けば、それがどういう意味で、またどういうシチュエーションで使われるか分かってきます。
しかし、決まり文句ではなく長い文章をネイティブが話してきたら、文法力がない限りとても太刀打ちできません。仮定法や分詞構文などを知らない人が、それらの文法が使われている例文を正確に聞き取ることは一生無理です。
例えば以下の文章をネイティブが話したとします。
Not just did it start raining but my umbrella was broken due to strong wind.
上の文章で使われている構文は、会話でもよく使われます。これを知らない人は、最初の「Not just did it start raining」を聞いて、「雨は降り始めなかったんだな」と理解します。しかし正解は、「雨が降り始めた」です。
この構文は「Not just (= only) ~ but (also) ・・・」で、「~だけでなく・・・も」という意味になります。これを間違って理解すると、全く逆の意味にとらえてしまうことがあるのです。
それでは、次の文章はどうでしょうか。
Had she been able to solve the problem, I would have been surprised.
上の例文では、彼女は問題解決をすることができたのでしょうか。正解はできていません。これは仮定法の形で、「実際に起こったこととは違う仮定の話」を述べるときに使われます。また、この文章では「倒置」も使われています。文法を知らなければ、上の文章を正しく聞き取れませんし、また自分で使えるようになりません。
「英語をシャワーのようにたくさん浴びていれば、いつか突然聞き取れるようになり、話せるようにもなる」と言う教材はたくさんありますが、それはありえないことがお分かりいただけたかと思います。
文法と語彙力をつけ、英文を正確に読めるようになればリスニング力は伸びる
何度も述べていますが、正確なリスニング力をつけるためには文法学習と英単語の暗記は必須です。これらを学習して、まずは1つ1つ「英文を読んだとき、正確に理解できる文章」を確実に増やしていきます。「読み」であれば、自分のペースで読むスピードを決められるので、英文をしっかりと理解することができます。
このような練習を積み重ねていくうちに、徐々に英文を読むスピードが速くなっていきます。ネイティブが文章を音読するのと同じくらいのスピードで読み、理解できれば、同じ文章をネイティブが読み上げても理解できるはずです。
このようなステップを重ねて、リスニング力を伸ばしていきます。ただ、リスニングに関しては単語の音の崩れなどが発生します。
例えば、「Have a good time」は「ハブ ア グッド タイム」とは発音されず、「ハバグッタイム」のように発音されます。これらは別にトレーニングをしていかなければいけません。また、リーディングに関しても頭から英文を読んで理解する練習が必要です。
このリーディングとリスニングの2つを支えるのが、文法力と語彙力となります。まずはこの2つをしっかりと身につけることが大切です。こういった正しいプロセスを経て、英語が聞き取れるようになっていきます。