ここでは、米国CNNの記事を題材に、英文読解の練習をしましょう。
以下は日本の経済状況に関する記事です。
リーディング問題1
The country’s GDP shrank by 1.4% in the last three months of 2015, the government said Monday, underlining the challenges for officials who have been trying for years to drag the world’s third-largest economy out of stagnation.
引用元:
More bad news for the world economy: Japan is going backwards again
CNN 14 February, 2016
まずは、……, the government said Mondayとありますので、ここは「(日本)政府が月曜日に発表したところによれば」となります。「2015年最後の3ヶ月でGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)が1.4%低下した」ことを発表したということです。
この問題1は引用元記事の最初の出だしのところなのですが、いきなりThe country……と始まっています。定冠詞theの基本的な用法としては、すでに話題となっている名詞につけますので、いきなりThe country……で始まると、いったいどこの国に言及しているのかわかりません。
しかしながら、この記事の題名はMore bad news for the world economy: Japan is going backwards againですので、ここのThe countryは日本のことを指しているのは明らかです。また、そのあとに続いているthe governmentについても、日本政府のことを示しています。
このように、英文を精読していく上で、定冠詞・不定冠詞の解釈は非常に重要です。特に今回のように、文章の一番最初が定冠詞で始まっていたならば、少し身構えて(注意して)読むくせをつけてください。
最初にでてくる動詞shrankはshrink(縮む、少なくなる、減少する)の過去形です。このように数量などの増減を%で表現するときには、前置詞byを使います。例えば「10%増加した」でしたら、increased by 10%となります。もっとも、この場合のbyはそう略されることもあります(例題2に例があります)ので、注意してください。
文の中ほどではunderlining the……と分詞構文が続きますが、意味としては付帯状況と解釈するのが自然でしょう。GDPの低下がthe challenges for officials(役人にとっての難問)を強調しているということになります。
このunderlineは「強調する」という意味の動詞で、同意語にはunderscore, emphasize, markなどがあげられます。新聞やニュース記事でよく目にする単語であり、英作文でも役に立つ表現ですから、同意語と一緒に覚えておきましょう。
また、officialという単語には、「職員、公務員、役人、政府高官」などの意味があります。officialsのあとには関係代名詞whoが続いており、officialsを詳しく説明しています。「世界第3位の経済を不況から引きずり出すために何年も努力している」officialsということです。
この文脈から、ここでのofficialsは、おそらく政府機関の職員のことを指していると解釈できます。また、世界第3位の経済というのは、もちろん日本の経済のことを指しています。「GDPの低下」が「政府職員にとっての難問を強調している」ということになりますが、要するに、GDPの低下は政府職員にとって難問である、ということを言っています。
ちなみに、drag 物/人 out of ~で「?から物/人を引きずり出す」という意味になりますが、今回の例のように、必ずしも物理的なもの(例えば、穴から引きずり出すなど)だけではなく、概念的な事象に対しても使えるということを覚えておいてください。
問題1の例訳
リーディング問題2
The gloomy number comes at a turbulent time for Japanese financial markets. Stocks in Tokyo plunged more than 11% last week as the country’s currency, the yen, soared to its highest level against the dollar since late 2014.
問題2ですが、引用元記事では問題1のすぐうしろに続く文となっています。まずThe gloomy numberと始まりますが、問題1で解説したとおり、theというのはすでに話題になっている(読み手と書き手がお互いに共通認識がある)名詞につけます。gloomy numberというのは「悲観的な数字」ということですから、ここでは1.4%(GDPの低下)を示していると解釈できます。
次のcomesという単語はどのように解釈するべきでしょうか。comesのうしろはat a turbulent time for Japanese financial markets(日本の経済市場にとって荒れ狂う時期に)となっていますので、そのような経済状況で今回の1.4%というgloomy numberが「発表された」ということです。文字通り「来た」と解釈しては意味が通じませんので、文脈をよく読んで判断してください。
2つ目の文は、前のa turbulent time for Japanese financial marketsのことを具体的に説明しています。日本の経済市場にとって荒れ狂う時期とは具体的に何か、ということです。
まず単語を確認しましょう。stocksは「株式」、plungeは「?という状態になる、?急落する」、soarは「急上昇する」です。この3つの単語に加え、問題1で解説したshrinkという単語は、経済関係のニュースで頻出の単語ですので、全てセットで頭にいれてください。
加えて、Stocks in Tokyoですが、これは「東京の株式」ということではなく、「東京証券取引所(東証)で取り引きされている株式」という意味です。
さて、文の構造ですが、2つの文がasで繋がっています。ここでのasの解釈は非常に難しいところですが、比例を表していると解釈するのが妥当だと思われます。「日本の通貨である円(の価値)が、ドルに対して、2014年暮れから最大のレベルまで上昇した(円高ドル安が進んだ)」なか、「先週東証の株価が11%以上下落した」ということです。
または、理由を表していると解釈することもできるでしょう。「先週東証の株価が11%以上下落した」理由は「日本の通貨である円(の価値)が、ドルに対して2014年暮れから最大のレベルまで上昇した」からである、という具合です。
また、問題1で説明したbyの使い方ですが、plunged more than 11%となっているとおり、ここでは省略されています。もしbyをつけるとすれば、plunged by more than 11%となります。